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おっちゃんや。「代理店には売値を決めて守らせたい」て思う事業者さん、多いと思うんやけど、そこは先に線引きを聞いとき。
商品を代理店に売ってもらうとき、「この値段で売ってください」と伝えたくなる場面は少なくありません。ところが、この価格の指示は、やり方しだいで独占禁止法の問題になります。公正取引委員会の「流通・取引慣行に関する独占禁止法上の指針」は、2026年(令和8年)7月8日に改正されています。この記事では、その指針を一次資料として、代理店に販売価格を指定してよい場合と、問題になりやすい場合を5つの質問で整理します。
読み終えると、自社の代理店契約が「取次ぎ」型か「販売店」型かを見分ける視点と、契約書や価格表を作るときの確認項目が分かります。
質問1 代理店に「この値段で売って」と指示するのは自由?
答え: いつでも自由とは言えません。代理店と呼んでいても、実際の取引が「商品を仕入れて自分の責任で売る」形なら、その価格を拘束することは原則として違法とされています。
公正取引委員会の指針は、事業者が取引先の販売価格を拘束する行為を「再販売価格の拘束」と呼び、流通業者どうしの価格競争を減らすものとして、正当な理由がない限り違法とする考え方を示しています(独占禁止法第2条第9項第4号の不公正な取引方法)。ここで大事なのは、名前ではなく中身で見られる点です。契約書の題名が「代理店契約」でも、実態が販売店なら、販売店と同じ見方になります。
反対に、取引先が単なる取次ぎとして動き、実質的にみて自社が販売していると認められる場合は、価格を指示しても通常は違法にならないと、同じ指針に書かれています。つまり分かれ目は「誰が売っているのか、誰が危険を負っているのか」です。
おっちゃん、うちは「代理店」って名前で契約してるから、値段を決めても大丈夫やんな?
それは危ないで。名前やのうて、中身で見られるんや。
中身て、何を見られるん?
売れ残りの損や代金回収の危険を、誰が負ってるかや。ここが次の話の中心やで。
この点は令和の総合商社のコラム『「代理店契約」のはずが、中身は「販売店」だった?契約の3つの型と、決めておくこと』でも詳しく触れています。
質問2 「再販売価格の拘束」は、どうなると当てはまる?
答え: 示した価格で売らせる「実効性」が、何らかの手段で確保されていると当てはまります。口頭の依頼だけでも、守らない相手に不利益を課す仕組みがあれば問題になりえます。
指針は、拘束があるかどうかを、人為的な手段で価格を守らせる実効性が確保されているかで判断するとしています。例として、次のような場合が挙げられています。
- 契約書や同意書で、販売価格を守ることを定めている
- 指示に従わない相手への出荷停止など、経済上の不利益を課す
- 相手の販売価格を監視している
なお、役務(サービス)の提供価格を拘束する場合も、考え方は同じ系統で、別の条文(一般指定12項)の問題になると指針は整理しています。商品を売る代理店だけでなく、サービスを取り次ぐ代理店も同じ視点で見ておくと安心です。
例外として「正当な理由」がある場合は違法にならないとされていますが、認められるのは、競争を促す効果が実際に生じ、需要が増えて消費者の利益になり、しかも拘束以外の方法ではその効果が得られない、という条件がそろったときに限られます。認められる場合も「必要な範囲及び必要な期間に限り」です。いわゆる「ただ乗り」を防ぐ場合などが典型例とされていますが、簡単に認められる前提で考えるのは避けたほうがよいでしょう。
質問3 「単なる取次ぎ」と見られるのは、どんな代理店?
答え: 代理店が売れ残りや代金回収の危険を負わず、取引が自社の危険負担と計算で行われている場合です。指針は、価格を指示しても通常は問題にならない3つの典型を挙げています。
| 典型 | 見られる中身 |
|---|---|
| 委託販売 | 受託者が保管や代金回収で注意義務を超える危険を負わず、取引が委託者の危険負担と計算で行われる |
| 卸売業者が間に入る形 | メーカーと小売業者が直接価格を交渉し、卸売業者は物流と代金回収を担って手数料を受け取る |
| メーカーが危険と費用を負う形 | ユーザーへの販売までに生じる危険と費用を、メーカーが自ら負担する |
ここでいう「危険と費用」には、売れ残り、契約不適合(品質や数量の食い違い)、在庫の滅失や毀損、代金回収不能のほか、保管や輸送、広告にかかる費用が含まれると指針に書かれています。指針の事例には、産業用部品のメーカーが代理店に物流・代金回収・在庫保管を任せ、価格を指示するケースや、家電メーカーが取引先に一般消費者への販売価格を指示するケースが、実質的にメーカーが販売していると認められる例として挙げられています。
2026年7月の改正では、この「単なる取次ぎ」として通常は違法とならない考え方に当てはまる場合と、具体例が追加されたと公正取引委員会の発表にあります。改正後の文言は、契約を作る前に原文で確かめてください。
おっちゃん、結局「売れ残りを誰が引き受けるか」で決まるんか?
せや。売れ残りも在庫の傷みも代金の取りはぐれも、全部メーカー側が持つなら、メーカーが売ってるのと同じに見られるんや。
ほな、代理店が在庫を買い取って売るなら?
それは販売店の形やな。値段の指示は、さっきの拘束の話になりやすいで。
質問4 「希望小売価格」として伝えるのは問題ない?
答え: 参考として示すだけなら問題とされていません。ただし、守らせる運用をすると、拘束に当たります。
指針は、希望小売価格や建値が、流通業者に単なる参考として示される限りは問題にならないとしています。一方で、「参考」と言いながら実際には守らせているなら、再販売価格の拘束です。伝え方の望ましい形として、指針は、「正価」「定価」や金額だけの表示ではなく、「参考価格」「メーカー希望小売価格」のような拘束的でない言葉を使い、販売価格は流通業者が自主的に決めることを明らかにする方法を挙げています。
代理店向けの資料で、確認しておきたい点は次のとおりです。
- 価格表の見出しが「定価」「販売価格」になっていないか
- 「参考」「希望」であること、実際の売値は相手が決めることが書かれているか
- 値引きした代理店に、取引の停止や条件の変更を伝える運用になっていないか
- 他の代理店の売値を調べて、報告させる仕組みがないか
公正取引委員会の「よくある質問」には、広告に表示する価格を制限することも、原則として不公正な取引方法に当たるという趣旨の説明があります。販売価格だけでなく、広告での値引き表示の禁止なども、同じ視点で見直しておくとよいでしょう。
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質問5 取次ぎ型で価格を指示するなら、契約書で何を決める?
答え: 売れ残り、代金回収、在庫、費用の負担を、自社が負うと契約書と運用の両方ではっきりさせます。価格だけ指示して、危険と費用は代理店に回す形は避けましょう。
指針の関連する質問では、メーカーが負担すべき費用の例として、在庫の保管費用、輸送費用、広告宣伝費用、荷造費用、見本費用、人件費、研修費用、保険料が挙げられています。費用の内容と負担の方法を相手との間で確認し、明確にしておくことが重要とされています。次の順で見直すと整理しやすくなります。
- 代理店が商品を買い取るのか、自社の商品を預かって取り次ぐのかを決める
- 取り次ぐ形なら、売れ残りや在庫の傷みを自社が負うことを書く
- 代金の回収を誰が行い、回収できなかったときの損を誰が負うかを書く
- 保管、輸送、広告などの費用の負担を、項目ごとに書く
- 代理店の取り分(手数料など)の決め方を、危険の負担と合わせて書く
- 買い取る形(販売店型)なら、価格は「参考」にとどめ、拘束しない運用に改める
この点は令和の総合商社のコラム『代理店の担当エリア、「エリア外で売らないで」は違法?地域制限が問題になる条件は、シェア20%と価格の維持です』でも詳しく触れています。
おっちゃん、うちは小さい会社やけど、そんな細かいところまで決めなあかんの?
小さい会社ほど、あとで揉めると痛いんや。費用の負担は項目ごとに書いとくと安心やで。
迷ったときはどうしたらええん?
公正取引委員会の相談窓口や、弁護士に契約書を見てもらうのが近道やで。
まとめ 名前ではなく、危険と費用を誰が持つかで見る
代理店に販売価格を指定できるかどうかは、「代理店」という呼び名では決まりません。見られるのは、売れ残り、在庫、代金回収の危険と、保管や輸送などの費用を誰が負っているかです。
- 販売店型で売値を守らせると、再販売価格の拘束として原則違法になるおそれがある
- 委託販売など取次ぎ型で、危険と費用を自社が負うなら、価格の指示は通常は問題にならない
- 希望小売価格は、参考として示す限りは問題とされず、「参考価格」と明記して守らせない
- 契約書では、危険と費用の負担、手数料の形を、項目ごとにはっきり書く
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この記事は2026年10月27日時点の公正取引委員会の公表資料にもとづく一般的な説明で、個別の契約が独占禁止法に違反するかどうかを判断するものではありません。実際の判断は、取引の実態によって変わります。契約書の作成や価格の運用は、弁護士や公正取引委員会の相談窓口などの専門家や所管の窓口に確認してください。最終的な判断は専門家や所管の窓口にご確認ください。
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