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新しく入った人を迎えるのも、準備から文化祭です。委員長です。教える順番を先に並べておけば、当日に慌てません。みんなでやろう、を合い言葉に進めます。
準備から文化祭、の気持ちで、建設業 安全衛生教育 手順を整理します。この記事では、雇い入れたときに行う教育の根拠と8つの項目、小さな会社でも回せる当日の進め方、現場に出る前に確かめること、記録の残し方を順に説明します。経験がある人を迎えた場合に一部を省ける考え方や、危険な業務で別に必要になる特別教育との違いも扱います。
雇い入れ時の教育は法律で決まっています
労働安全衛生法第59条第1項は、事業者が労働者を雇い入れたときは、その人が従事する業務に関する安全または衛生のための教育を行わなければならないと定めています。第2項では、作業内容を変更したときにも同じ考え方を当てはめるとしています。つまり、新しく入った人への教育は、会社の任意の取り組みではなく、雇い入れる側の務めです。
細かな項目は労働安全衛生規則第35条にあります。同条は、雇い入れ、または作業内容の変更のときに、遅滞なく、次の8つの事項のうち、その人が従事する業務で安全または衛生のため必要な事項について教育を行うよう求めています。建設の現場では、機械や材料、高い場所での作業、車両の動きなど、現場ごとに危なさの出方が変わります。自社の作業に引き寄せて、必要な事項を取りこぼさないことが出発点になります。
委員長、新人の経験があれば教育は省いてもいいですか?
省けるのは、十分な知識と技能があると認められる事項だけです。
経験がある、というだけで全体を省くわけではないのですね。
そのとおりです。どの事項を、なぜ省いたかまで残しておきましょう。
同規則第35条第2項は、8つの事項の全部または一部について十分な知識と技能を有していると認められる人については、その事項の教育を省略できるとしています。ただし、これは経験年数だけで決める話ではありません。免許や修了証、これまでの作業内容などを確かめ、自社の現場の決まりは改めて伝える、という分け方が現実的です。省いた事項と理由を記録に残しておくと、後から確かめ直せます。
教える8項目を自社の作業に置き換えます
規則第35条第1項の8項目は、次のとおりです。1つ目は機械等や原材料等の危険性または有害性と、それらの取り扱い方法です。2つ目は安全装置、有害物抑制装置、保護具の性能と取り扱い方法です。3つ目は作業手順、4つ目は作業開始時の点検です。5つ目は、その業務で発生するおそれのある疾病の原因と予防です。6つ目は整理、整頓と清潔の保持です。7つ目は事故時などにおける応急措置と退避です。8つ目は、そのほか、その業務の安全または衛生のために必要な事項です。
この文言のまま読み上げても、新しく入った人には伝わりにくいものです。小さな会社では、項目ごとに自社の言葉へ置き換える作業を先にしておきます。たとえば1つ目なら使う電動工具や材料の名前、2つ目なら保護具を実際に手に取って着ける練習、4つ目なら始業前に見る場所の順番、7つ目ならけがをしたときの連絡先と集合場所、という具合です。項目と自社の作業を対応させた一覧が1枚あると、教える人が替わっても内容がぶれにくくなります。
あわせて、現場ごとの案内も用意します。同じ会社でも、現場が変われば出入り口、休憩場所、立入禁止の範囲、元方事業者からの指示の受け方は変わります。雇い入れ時の教育で会社の基本を伝え、現場に入る前にその現場の決まりを伝える、二段構えにすると漏れが減ります。元方事業者が行う新規入場者向けの案内がある場合は、日時と受け方を新しく入った人へ先に知らせておきます。
当日の進め方を手順で決めておきます
進め方は、入社が決まった時点で段取りを始めるのが要点です。当日に資料を探したり、教える人を探したりすると、教育の前に現場へ出てしまう事態が起きやすくなります。小さな会社向けに、手順を次のように決めておきます。
- 担当と日時を決めます。教える人、教える場所、使う資料を先に決め、現場に出る初日の前に時間を取ります。
- その人の作業内容を確かめます。担当する作業、使う機械や材料、資格の有無を聞き、8項目のうち必要な事項を選定します。
- 省く事項がある場合は理由を決めます。十分な知識と技能があると認めた根拠を、免許や修了証などで確かめてから決めます。
- 8項目に沿って教えます。資料の読み上げだけでなく、保護具の着用や点検の場所など、手を動かす確認を交えます。
- 分からない点を聞き取ります。質問の時間を設け、答えられなかった点は誰に聞けばよいかを伝えます。
- 現場の決まりを案内します。出入口、立入禁止範囲、連絡の流れ、事故時の退避先を、実際の場所や図面で示します。
- 理解の確認をして記録します。教えた事項ごとに確認欄を設け、受講者と教育担当の双方で確かめます。
- 特別教育や資格が要る作業かを見分けます。該当する作業は、必要な教育や資格を済ませるまで担当させない段取りにします。
委員長、教育の時間は法律で決まっているのですか?
雇い入れ時の教育に、時間の定めは条文に見当たりません。
では短く済ませてもよいのですか?
必要な事項を伝わる形で教えることが目的です。順番を決めておきましょう。
手順の最後にある見分けは大切です。労働安全衛生法第59条第3項は、危険または有害な業務で厚生労働省令で定めるものに労働者を就かせるときは、特別の教育を行わなければならないとしています。雇い入れ時の教育と特別教育は別のものです。足場の組み立てなどの業務が規則で定められているため、自社の作業が当てはまるかは、規則第36条の業務一覧と照らして確かめます。
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記録の残し方と特別教育との違い
雇い入れ時の教育について、規則第35条には記録の保存期間の定めは見当たりません。それでも、記録を作ることには意味があります。いつ、誰に、誰が、どの事項を教え、どの事項をなぜ省いたかが残っていれば、作業内容が変わったときの教育や、次の新しく入った人への準備にそのまま使えます。記録の項目は、日時、受講者名、教育担当者名、教えた事項、省いた事項とその理由、質問と回答の要点、理解確認の結果、の順でそろえると書きやすくなります。
一方、特別教育の記録には保存の定めがあります。労働安全衛生規則第38条は、特別教育を行ったときは、受講者や科目等の記録を作成して、3年間保存しておかなければならないとしています。雇い入れ時の教育の記録と、特別教育の記録は、別のものとして分けて保管します。混ぜてしまうと、保存の扱いを取り違えやすくなります。
保管の形は、紙でも電子でも、自社で探し出せる形であれば運用できます。大切なのは、現場や作業が変わるたびに記録を見直せることです。作業内容を変更したときにも教育が必要になるため、変更の履歴と教育の記録をつなげて残しておくと、次に何を教えるべきかが分かりやすくなります。
現場に出る前に確かめること
教育が終わっても、現場に出る前の確認は別に必要です。保護具が体に合っているか、担当作業と資格が見合っているか、緊急時の連絡先を本人が言えるか、といった点です。特に、危ないと感じたときに作業を止めて誰へ知らせるかは、言葉で確かめておきます。新しく入った人が遠慮して言い出せないまま作業に入ることが、事故につながりやすいからです。
また、職長など、作業中の労働者を直接指導または監督する立場の人への教育も別にあります。厚生労働省は、建設業で職長等の再教育について、概ね5年ごと、または機械設備等に大きな変更があったときに受けさせるよう求める要綱を紹介しています。新しく入った人の教育と、指導する側の学び直しは、両方を予定に入れておくと現場の教え方が安定します。
委員長、記録は紙で残さないといけないのですか?
形よりも、後から探し出して見直せることが大切です。
特別教育の記録とは分けるのですね。
はい。保存の定めが違うので、分けて保管しましょう。
確認の最後に、教育の内容そのものを見直します。事故やヒヤリとした出来事があった作業、道具や材料が新しくなった作業は、教える内容の更新が必要です。規則第35条の8項目に立ち返って、自社の一覧表のどこを直すかを決め、次の教育から反映させます。
まとめ
建設業で新しく入った人への安全衛生教育は、労働安全衛生法第59条と労働安全衛生規則第35条に基づく務めです。8項目の中からその人の業務に必要な事項を選び、自社の作業の言葉に置き換えて教えること、省いた事項と理由を含めて記録を残すこと、現場ごとの決まりを出る前に案内すること、この3つを手順として決めておけば、小さな会社でも続けやすくなります。危険な業務の特別教育とは分けて考え、記録の保存の扱いも分けておきます。準備を型にしておくことが、みんなで安全に働く土台になります。
この記事は一般的な情報の整理です。個別の作業や現場に当てはまる教育の内容、特別教育や資格の要否は、労働安全衛生法令の最新情報とあわせて、社会保険労務士や労働安全コンサルタント、所轄の労働基準監督署など専門家や所管の窓口にご確認ください。