当サイトは広告を含みます。
へいらっしゃい! 開店前にそろえた道具や広告代、あとで経費にできるのか気になるところだよね。一緒に整理していこう。
これから個人で商いを始める人は、開業の準備でお金を使う場面が続きます。看板、チラシ、仕入れの下見の交通費など、営業を始める前の支出は、帳簿の上でどう扱えばよいのでしょうか。この記事では、開業前の支出の扱いである「開業費」を中心に、5つの質問と答えの形で整理します。内容は2026年10月27日時点で確認した国税庁の資料にもとづきます。
質問1 開業費とは何ですか?
答え: 事業を始めるまでに、開業の準備として特別に支出した費用のことです。国税庁の資料では、たとえば開業準備のために支出した広告宣伝費や、開業までの給料賃金が例にあげられています。
税法上、開業費は「繰延資産」の一種として扱われます。繰延資産とは、個人が支出した費用のうち、支出の効果が支出した日から1年以上に及ぶものを指します。開業費のほかに、開発費や共同的施設の負担金、建物を借りるための権利金などが、繰延資産の主な種類として示されています。
ここで注意したいのは、資産を取得するための費用は繰延資産から除かれる点です。たとえば、店で長く使う機械や設備を買った場合は、開業費ではなく、減価償却の対象となる資産として別に扱います。「開業前に払ったお金は全部開業費」とは考えないようにしましょう。
この点は令和の総合商社のコラム『仕入れた商品は「売れるまで」経費にならない。売れ残り在庫のホントのルール』でも詳しく触れています。
会長、開業前に使ったお金は、全部まとめて開業費になるんですか?
そうとは限らないよ。開業の準備として特別に支出した費用が開業費なんだ。
じゃあ、お店で使う機械を買った分はどうなりますか?
資産を買う費用は繰延資産から除かれるから、別に資産として扱うんだよ。
迷ったときは、どうすればいいんですか?
領収書は取っておいて、税務署や税理士さんに確認しようね。
質問2 開業費は、いつ、どれだけ経費にできますか?
答え: 開業費は、支出した額の範囲で、自分で決めた金額を本年分の必要経費にできます。国税庁の資料では、開業費、試験研究費、開発費は、ほかの繰延資産のように年数で割る計算によらず、支出額の中から任意の金額を必要経費にできると説明されています。
国税庁の質疑応答事例では、この償却に下限は設けられておらず、支出した年に全額を償却することも、まったく償却しないことも可能と解されています。たとえば、開業の年の利益が小さいときは少なめに、利益が大きいときは多めに、というように、年ごとに調整する考え方ができます。
償却の期間が60か月(5年)を過ぎたあとについても、同じ質疑応答事例で、必要経費に算入できないとする特別の規定はなく、未償却の残高はいつでも償却費として必要経費に算入できるとされています。ただし、支出した開業費の内容と、その額が過去の年分で必要経費に算入されていないことを、明らかにしておく必要があります。そのため、何にいくら使ったかを、一覧にして残しておくと安心です。
| 確認する点 | 国税庁の資料で確認できた内容 |
|---|---|
| 開業費の意味 | 事業を始めるまでに、開業の準備として特別に支出した費用 |
| 経費にする金額 | 支出額の範囲で、任意の金額を本年分の必要経費にできる |
| 償却の下限 | 下限は設けられておらず、全額も、まったく償却しないことも可能と解されている |
| 年数が過ぎたあと | 未償却の残高は、いつでも償却費として必要経費に算入できる |
| 残しておくもの | 支出した内容と、過去の年分で経費にしていない額を示せるもの |
質問3 白色申告でも開業費の償却はできますか?
答え: 国税庁の「収支内訳書(一般用)の書き方」には、開業費や開発費、共同的施設の負担金、建物を借りるための権利金などの繰延資産の償却費も、収支内訳書2ページの「減価償却費の計算」欄で計算するよう書かれています。収支内訳書は、白色申告の人が申告書に添える書類です。
つまり、白色申告でも、開業費の償却費を計算する場所は用意されています。青色申告でも白色申告でも、開業費を償却費として計算する考え方そのものは同じです。
なお、青色申告と白色申告の違いや申請の期限は、このサイトの別の記事で比べています。申告の方法を決めるときは、そちらもあわせて確認してください。
質問4 開業後の普通の支出は、どう考えますか?
答え: 営業を始めたあとの支出は、開業費ではなく、通常の必要経費として考えます。国税庁の「必要経費の知識」では、必要経費として、売上原価など総収入を得るために直接かかった費用と、その年に生じた販売費、一般管理費、その他業務上の費用が示されています。
経費にする時期は、お金を払ったかどうかではなく、その年に債務が確定しているかで判断します。債務の確定とは、次の3つがすべてそろうことです。
- 年末(12月31日)までに、支払う義務が成立している
- 年末までに、支払いの原因となる事実が発生している
- 年末までに、金額を合理的に計算できる
年末が近づくこの時期は、12月中にサービスの提供を受けたのに請求書が翌年に届く、といった場面が出てきます。その年に経費にできるかは、上の3つで確かめましょう。
また、自宅と店が一緒になっている場合の家賃や水道光熱費のように、家事と仕事の両方に関わる費用は、取引の記録などで仕事に使った部分が明確に分けられる金額だけが必要経費になります。開業前の段階から、仕事用の支出とそうでない支出を分けて記録しておくと、あとで困りません。
会長、開業してからの支出は、開業費とは別なんですね。
そうだよ。営業を始めたあとは、普通の必要経費として年ごとに考えるんだ。
払ったお金は、全部その年の経費ですか?
払った日ではなく、年末までに債務が確定したかで決まるんだよ。
家賃が自宅と店の両方の場合はどうなりますか?
仕事に使った部分が明確に分かる金額だけが経費になるんだ。
質問5 領収書や帳簿は、いつまで取っておきますか?
答え: 国税庁の案内では、事業所得、不動産所得、山林所得を生ずべき業務を行うすべての人に、記帳と帳簿書類の保存の義務があります。所得税の申告が必要ない人も含まれます。保存期間は次のとおりです。
| 保存するもの | 保存期間 |
|---|---|
| 収入金額や必要経費を記載した帳簿 | 7年 |
| 業務に関して作成したその他の帳簿 | 5年 |
| 棚卸表などの決算関係書類 | 5年 |
| 請求書、納品書、領収書などの書類 | 5年 |
開業前に受け取った領収書や請求書も、あとで開業費の内容を説明するときに役立ちます。開業届を出す前の支出だからといって捨てずに、日付と内容が分かる形で整理しておきましょう。帳簿は、取引の年月日、相手方の名称、金額などを記載し、日々の合計金額だけを書く簡易な方法でもよいとされています。
書類は、住所地や事業所などの所在地に整理して保存します。一定の要件を満たせば、電子データでの保存も認められています。
PR(当サイト関連サービスへのリンク)
まとめ 開業前の支出は、分けて、残して、確認する
最後に、この記事の要点を整理します。
- 開業費は、事業を始めるまでに開業の準備として特別に支出した費用で、繰延資産の一種です。
- 開業費は、支出額の範囲で任意の金額を必要経費にでき、未償却の残高は後の年でも経費にできると、国税庁の資料で説明されています。
- 資産を取得する費用は繰延資産から除かれるため、開業前の支出は、開業費かどうかを分けて考えます。
- 開業後の支出は通常の必要経費で、その年に債務が確定したかで時期を判断します。
- 帳簿は7年、請求書や領収書などは5年の保存が必要です。
開業前の支出は、今のうちに一覧にしておくと、年明けの申告の準備が楽になります。どの支出がどれに当たるかは、事業の内容によって変わります。判断に迷うものは、そのままにせず、早めに確認しましょう。
開業費に当たるかどうか、いつ、いくら償却するかは、事業の内容や支出の状況によって変わります。最終的な判断は、税務署の窓口や税理士などの専門家にご確認ください。
参考にした公的資料
この記事が気に入った方は、ぜひシェアしてください。