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ご搭乗ありがとうございます。機長です。本日の行き先は「食品の海外販売」、離陸前の点検から着陸後の書類まで、順番にご案内します。
食品を海外で売りたいと思っても、何から手をつければよいのか分かりにくいものです。輸出先ごとに、また品目ごとに、求められる条件が異なるためです。この記事では、輸出先の選び方から、取引条件、品目別の証明書、輸出通関、代金の回収と書類の保存までを、6つの手順に分けて整理します。農林水産省、税関、ジェトロなどの公的な資料で確認できた内容に絞っています。
食品輸出の全体像と6つの手順
農林水産省によると、2025年の農林水産物・食品の輸出額は1兆7,005億円で、前年より12.8%増え、13年連続で過去最高になりました(2026年2月3日公表。財務省の貿易統計に基づき、確定前のため変更される場合があります)。国・地域別では、米国、香港、台湾が上位です。市場の広がりは分かりますが、個々の商品が売れるかどうかは別の話です。
輸出の流れは、おおむね次の6つです。順番どおりとは限らず、2と3を行き来することもあります。
- 商品と輸出先の候補を絞る
- 輸出先の規制と条件を調べる
- 取引先を探し、価格・貿易条件・決済方法を決める
- 品目に応じた証明書や許可を準備する
- 輸出通関を行い、貨物を輸送する
- 現地で販売し、代金を回収して、書類を保存する
機長、日本で売っている食品なら、そのまま輸出できるのですか?
そうとは限りません。日本の基準を満たしていても、輸出先の基準で認められない場合があります。
国によって、そんなに条件が違うのですか?
はい。まず輸出先を決め、その国の条件を調べるところから離陸準備が始まります。
手順1・2 輸出先の選び方と規制の調べ方
輸出先は、市場の大きさだけでは決められません。次の点を並べて比べると、候補を絞りやすくなります。
- 輸入規制や検査の内容
- 関税などの負担
- 輸送の日数と、商品の日持ち
- 取引先の見つけやすさ
なかでも規制の確認は最優先です。農林水産省の案内では、輸出先国・地域の規制(検疫、食品添加物、残留農薬、表示など)に従う必要があり、国内で必要な手続も品目、輸出先、原料、原料の生産国によって異なるとされています。たとえば、日本の残留農薬の基準を満たしていても、輸出先の基準を満たせず輸出できない場合があります。
調べる手がかりとして、農林水産省は、ジェトロの「日本からの輸出に関する制度」(各国・地域の輸入規制を調べられるページ)や、食品添加物の規制をまとめた早見表などを案内しています。ただし、早見表は2024年3月時点の情報で、基準や許認可は頻繁に変わるため最新でない可能性があると、同省のページに注意書きがあります。最終的には、輸入する事業者を通じて、輸出先国の当局に最新の条件を確認することが求められています。
相談先もあります。農林水産省には輸出相談窓口(輸出・国際局 輸出支援課)があり、ジェトロにも、経験豊富なアドバイザーに無料で相談できる窓口があります。主要な輸出先には政府の輸出支援プラットフォームが置かれ、規制や市場の情報をまとめたカントリーレポートが公開されています。
手順3 取引先と条件(価格・貿易条件・決済)を決める
取引先は、商談会や見本市、輸出を手がける商社、公的機関の支援などから探せます。農林水産省の輸出プロジェクト(略称GFP)は、無料の会員登録で、輸出商社からの商品リクエストや無料の輸出診断を利用できるとしています。ジェトロや中小企業基盤整備機構にも、海外バイヤーとの商談会などの支援があります(九州経済産業局の2026年版支援ブックによる、2025年度時点の内容)。
商談では、価格と一緒に貿易条件を決めます。貿易条件は、貨物をどこで引き渡すか、運賃や保険料をどちらが負担するかなどを定める取り決めです。条件によって見積額が変わるため、取引前に十分に話し合っておく必要があると、鳥取県の解説にあります。
決済方法も大切な条件です。日本政策金融公庫の海外展開ガイドでは、代金の回収リスクが低い順に、前払いの送金、信用状付きの荷為替手形、信用状なしの荷為替手形、銀行保証付きの後払い、後払い、と整理されています。後払いはリスクが最も高いため、前払いの比率を高める交渉やよりリスクの低い方法の提案が必要で、難しければ取引先の探し直しも検討する、とされています。
代金の未回収に備える手段として、貿易保険もあります。経済産業省の資料によると、日本貿易保険が運営し、取引先の破産や決済期日から3か月以上の不払いなどの信用危険、戦争や為替取引の制限などの非常危険が対象です。輸送中の貨物の損害を補償する海上保険とは別のものです。
手順4 品目に応じた証明書と許可を準備する
農林水産省は、輸出に関係する国内の主な制度を次のように整理しています。実際に求められる手続や証明書は輸出先国と品目で異なるため、輸入事業者を通じて輸出先の当局に確認するよう案内されています。
| 証明書など | 主な対象 | 内容の目安 |
|---|---|---|
| 植物検疫証明書 | 農産物、林産物、加工食品 | 植物防疫所での輸出検査が必要な場合がある。相手国の要求は輸入許可証や栽培地検査などさまざま |
| 輸出検疫証明書 | 畜産物、加工食品 | 相手国が求める場合に動物検疫所の検査を受ける。家畜伝染病の発生状況で輸入が認められないこともある |
| 施設認定・衛生証明書 | 農産物、畜産物、水産物、加工食品 | 相手国が認定・登録した施設での処理や、衛生証明書の添付が求められる場合がある |
| 放射性物質検査証明書・産地証明書 | 農産物、畜産物、水産物、加工食品 | 原発事故後の規制を設けている国・地域向けに必要となる場合がある |
| 自由販売証明書 | 農産物、畜産物、水産物、加工食品 | 国内で流通可能な食品であることを証明する書面。輸出先の政府機関から求められた場合に限り発行 |
このほか、米は食糧法に基づく輸出数量の届出が、まぐろ類などは漁獲証明書の添付が必要になる場合があります。しいたけ種菌、うなぎの稚魚、キャビアなどは、外為法に基づき経済産業大臣の承認が原則として必要です。
税関の案内では、輸出に他の法令の許可や承認が必要な貨物は、その許可書などを税関に示さなければ輸出が許可されません。該当するかどうかは各法令を所管する省庁に確認する必要があり、税関は他の法令の該否には回答しないとされています(2026年4月現在)。食品では、肉やソーセージ・ハムなどが家畜伝染病予防法、果実などが植物防疫法の対象として挙げられています。
機長、証明書は全部そろえないといけませんか?
全部ではありません。品目と輸出先によって、必要なものが決まります。
どの書類が必要かは、誰に聞けばよいのですか?
輸入する事業者を通じた、輸出先の当局への確認が基本です。国内の手続は、農林水産省の窓口などでも相談できます。
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手順5・6 輸出通関、輸送、代金の回収と書類の保存
輸出通関の流れ
輸出する貨物は、税関に輸出申告を行い、必要な検査を経て、輸出の許可を受けます。申告書には仕入書(インボイス)を添付し、他の法令で許可や承認が必要な貨物は、その許可書なども添えます。申告は輸出者本人のほか、委任を受けた通関業者が代理でも行えます。保税地域への搬入前でも申告できますが、許可は原則として搬入後です。
なお、税関は2026年7月付で、申告先の官署の選び方を見直す「申告官署の自由化」の資料を公表しています。最新の取扱いは税関や通関業者に確認してください。
輸送の手配
国際輸送は、船積書類の作成、梱包、倉庫への搬入と輸出通関、船積み、現地での輸入通関と関税の納付、荷受人への配送という流れです。手続が複雑なため、一括して引き受けるフォワーダー(運送業者)に依頼するのが一般的です。得意な品目や配送地は事業者ごとに異なります。
代金の回収と税の書類
輸出取引は、消費税が免除されます(輸出免税)。免税を受けるには、輸出許可書など、輸出取引であることを証明する書類を7年間保存する必要があります。さらに国税庁は、2026年10月1日以後、代金を現金や、取引相手以外からの振込などで受け取る場合に、輸入の事実を示す書類の保存も必要になる取扱いを示しています。詳しくは国税庁の案内で確認してください。
機長、結局、最初の一歩は何から始めればよいですか?
輸出先の候補を絞って、その国の規制を調べることです。同時に、相談窓口へ問い合わせてみましょう。
相談しても、すぐ輸出が決まるわけではないですよね?
はい。条件が合わなければ、輸出先を変える判断もあります。確認が早いほど、やり直しを減らせます。
まとめ
食品を海外へ売る手順は、輸出先の候補を絞り、規制を調べ、取引先と条件を決め、証明書や許可を準備し、輸出通関と輸送を行い、代金を回収して書類を保存する、という6つです。共通しているのは、輸出先と品目によって条件が変わることです。最新の条件は、輸入する事業者を通じて輸出先の当局に確認するのが基本になります。
はじめの一歩としては、候補の輸出先を2〜3か所に絞って規制を調べ、相談窓口、税関、通関業者に早めに問い合わせる流れが考えられます。相談先を探したい場合は、下のリンクも手がかりになります。
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輸出の手続や条件は、品目や輸出先によって異なり、制度も変更されます。個別の判断は、農林水産省の輸出相談窓口、植物防疫所・動物検疫所、税関、通関業者、ジェトロ、税務は税理士や税務署、契約書は弁護士といった専門家や所管の窓口にご確認ください。最終的な判断は専門家や所管の窓口にご確認ください。
参考にした公的資料
- 農林水産省「日本国内の輸出に係る制度」
- 農林水産省「農林水産物等の輸出におけるよくある相談」
- 農林水産省「2025年の農林水産物・食品の輸出実績について」
- 農林水産省「各国の食品・添加物等の規格基準」
- 農林水産省 農林水産物・食品輸出プロジェクト(GFP)
- 税関「輸出通関手続の概要」(カスタムスアンサー5001)
- 税関「税関で確認する輸出関係他法令の概要」(カスタムスアンサー5501)
- 税関「輸出入申告官署の自由化 質問と答え」(2026年7月)
- 国税庁「No.6551 輸出取引の免税」
- 日本政策金融公庫「海外展開ガイド 決済」
- 経済産業省「貿易保険」の解説資料
- 鳥取県「国際物流の基礎知識」(2021年10月)
- 経済産業省九州経済産業局「海外ビジネスサポートブック 九州版(2026年版)」
- ジェトロ「農林水産物・食品輸出相談窓口」
- ジェトロ「農林水産物・食品 輸出支援プラットフォーム」